NYで一番高いビル 2012 年 5 月 1 日
2001年の9月11日、いわゆる911で破壊された貿易センタービル。ビルの権利や建築の予算、被害者の感情など様々な問題が絡み、貿易センター跡地の再開発は予想よりずいぶんの時間が経っています。あのテロ事件から11年、過ぎた今もその跡地は未だに工事中です。
グランドゼロ(Ground Zero)と呼ばれる3,000人以上の人たちが亡くなったこの地、そのメモリアルも含めてOne World Centerの建設が進んでいます。貿易センタービルはニューヨークで一番の高さを誇っていましたが911事件の後はかのキングコングの映画で有名なエンパイヤービル(Empire State Building)がその一位に返り咲いていました。
この跡地に建てられる中心のタワーがFreedom Tower、まだ建設途中ですが、今週の月曜日、その高さがついにエンパイヤービルの1250フィート(381m)を抜いて1271フィート(388m)に達しました。このFreedom Towerは最終的には1776フィート(541m)に達する予定です。
ニューヨークの象徴である貿易センタービルが破壊されたのち、その跡地の利用にはいろいろと議論がありました。もう一度、同じ場所に高層ビルを建設する必要はないとの意見もあった中、エンパイヤーをしのぐビルの建設に再度着工しました。破壊された貿易センターと同等以上のビルを建設する、これはニューヨークと米国の世界に見せる気骨のようなものを感じます。屈することのない民主主義国家アメリカと言う気持ちが伝わってきます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
バスの運転手に武器を与える? 2012 年 4 月 19 日
Tasersって知っていますか。映画などで時々見る電気が走って相手を気絶される武器です。NYPD(ニューヨーク市警)も凶悪犯を逮捕するときに場合によってはこのTasersを使用します。このTasersをバスや電車の運転手に携帯させるという案が上院議員から提案されました。
バスや電車の運転手が武器を持つなど日本では考えられないでしょう。ニューヨークでは過去にバスの中や電車の中で銃の乱発事件やナイフを振り回す事件がありました。このような凶悪な事件は頻繁にあるわけではないのですが、バスや電車の運転手に乗客が悪態をつくという事件が後を絶ちません。
地下鉄とバスを運営するMTAの発表によると運転手に唾をかけるような悪態をつく事例が年間で1000件を超えているということです。バスの運転手が乗客に羽交い絞めにされてけがをするという事件も続きました。
バスの本数が減ったりとか、停車駅が減ったりとか、公共の交通のサービス縮小が続く中、運賃の値上げは容赦なく行われ、このようなバスや地下鉄を運営するMTAに不満を持つ客が多いのも事実です。
長引く不況の中で所得の増加どころか、仕事さえ見つからない市民。そんな市民の不満がいつも利用するバスや電車のサービスの対応の悪さに爆発する。こんなことは決して許されることではないのですが、それに対抗して武器で身を守ると言う発想は事態をさらに悪くするような気がします。
NYPD(ニューヨーク市警)もこの提案には反対しています。Tasersを扱える警官は訓練を受けた上級の警官に限られていて一般人であるバスや電車の運転手が使用することは危険だと言う主張です。もっともな意見だと思います。そもそも暴力には暴力でと言う発想はいかがなものか。あまりにも短絡すぎませんか。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
2万匹のハチ 2012 年 4 月 15 日
マンハッタンの目抜き通りと言えば5番街とパークアベニュー。特にニューヨーク中心のグランドセントラル駅から南北に走るパークアベニューは最も広い通りでマンハッタンの中心の通りと言えます。グランドセントラル駅42丁目から北90丁目くらいに続くこのパークアベニューに面して立派なマンションが並んでいます。この居住地は一般人は入れないコーポと言う特別なコミュニティになっています。
このコーポにはボード(委員会)があり、このボードの許可がない人は入居ができません。収入は勿論、地位、職業なども厳しくチェックされます。かのマリリンモンローが入居を狙いましたが許可が出ませんでした。有名人は周りの住人に迷惑をかけるのでだめだと言うわけです。
このような由緒あるパークアベニュー通りに面して49丁目にあの有名なオールドルフ アストリアホテルがあります。ヒルトン系列のこのホテル、もちろんニューヨークでも上位ランクのホテルです。このホテルの歴史は何と言っても歴代大統領が泊まること。オバマ大統領もニューヨークを訪問するときにはこのホテルを利用しています。大統領が宿泊すると周りは警官だらけの厳重体制となります。
この一流ホテルに土曜日に2万匹のハチがやってきました。やってきたと言っても実はハチの専門家が連れてきたのですが。20階の屋根まで蜂の巣とそれにまとわりつくハチを無事に誘導しました。わざわざ、ハチをホテルの屋根の上に誘導したのはそのハチミツを料理に使うためです。さすが一流ホテル、中々しゃれたことをやります。パークアベニューはマンハッタン中心に位置するセントラルパークと言う大きな公園が近くにあります。ハチも花の蜜を得やすいことからこんなことができます。都会と野生の調和、これができるのもニューヨークの魅力です。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
正当防衛 2012 年 4 月 12 日
全米中で議論を沸かし、犯人逮捕を求めるデモまで起きた事件で容疑者のZimmermanが第2級殺人で逮捕されました。45日前、Zimmermanは黒人のTrayvon少年を怪しいと通報ののち、自己防衛と称してこの少年を銃殺しました。
フロリダにあるStand-Your-Ground-Lawと言う法律。身の危険を脅された場合、相手を死に追い詰めても良いと言うものです。いわゆる正当防衛を認めた法律です。
フロリダの警察は現場に駆け付けた時、Zimmermanの供述を信じ、この事件は自己防衛によるものでフロリダのこのStand-Your-Ground-Lawによって逮捕の必要はないと判断。容疑者はそのまま釈放されました。
ところが被害者のTrayvon少年は武器は持っていなかったこと、黒人であったことから人種差別がらみの大きな問題となりオバマ大統領がこの事件に憂慮の発言をしたこともあり全米中の関心となっていました。今回の逮捕はそのような世論の中で動いたものです。
これからこの事件は司法の元へとその罪の判断がゆだねられます。ご承知の通り、米国の裁判では12人の陪審員の合意のもとに有罪か無罪かが決められます。このような人種問題が絡む事件の場合、その陪審員の人種によっても判決が大きく変わります。
前にある州で起きた正当防衛にかかわる、やはり白人が黒人を射殺した事件の裁判。陪審員12名がすべて白人で無罪判決となりました。これも大きな騒ぎとなった事件でした。永遠と横たわるこの人種の問題、アメリカの陰といえます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
オバマの対抗馬 2012 年 4 月 11 日
オバマ大統領(民主党)に対抗する共和党側の大統領候補指名選が終了しました。つい最近話題にしていた Rick Santorum が指名選のキャンペーンを打ち切ると表明しました。共和党内からの大統領候補者の一本化の圧力に加え、難病を抱えた娘への配慮から大統領候補をとうとう断念しました。
これで今年11月に行われる大統領選挙でオバマ大統領に対抗する共和党の候補者はMitt Romneyと決まりました。アメリカではこのような大統領の候補者選びをはじめとする選挙では候補者が一堂に会して討論会を行い、それを聞いた党代議員などの投票者が投票を行います。
その当日の討論の出来具合によってその投票数が大きく変わるというもので下手な考えは披露できません。この数か月に及ぶ長い戦いの間に候補者の人格や収入、家族関係まで身ぐるみはがされ行くような感じです。
対抗馬の誰かがメディアにライバルに不利な情報を流すのか、メディアが収拾するのかは定かではありませんが、ちょっとレースで優勢を走り出すと必ず、揚げ足を取るような情報が流れます。この不利な情報はさまざまで例えば大統領候補に決まったMitt Romneyは資産の大きさを批判され、収入の割に支払った税金が少ないことを責められました。それだけでなく宗教がモルモン教、自分の会社の従業員を解雇したなど、次々と個人情報が暴露されました。
Rick Santrumの前に指名選を断念したGingwitchは数回にわたる再婚や不倫関係まで取りざたされて娘や前配偶者までがメディアに追われました。
民主主義のアメリカ。国民は指導者に対してその人格や思想背景、育ちまですべてを知ろうとし、本当に自分たちの指導者として正しいのか判断します。市長選、大統領選でも同じことが繰り返され、家族を大事にするかどうかは当選での大きなポイントにもなります。対立候補が相手の考えや周辺状況をTV広告で攻撃することは選挙戦では当たり前です。この繰り返されるネガティブキャンペーンでその候補者の実態が見えてくる。アメリカの選挙はきれいごとでは済まない。
日本のように党内でわけわからないうちに首相が決定するようなことはありません。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
またも銃撃戦 2012 年 4 月 9 日
ブルックリンでまたしても銃撃戦です。4名の警官が撃たれました。3名が足を撃たれ、1名は銃弾が顔をかすめました。ガールフレンドとその子供を人質としてアパートの立てこもった前科のある犯人との銃撃戦でした。犯人は腹を撃たれて逮捕され、病院で治療中です。
わずか10フィート(3メートル)での4名での銃撃戦。考えただけでもおそろしくなります。まだ4月と言うのにニューヨーク市では今年に入って6名の警官が銃で撃たれています。ニューヨークでは銃の携帯は禁止です。販売も禁止です。ところが銃による事件は後を絶ちません。ニューヨーク州の近辺から銃が流れてきます。隣接するペンシルバニア州、バージニア州は銃は合法として認められ、それらの州で販売されている銃が流れてきていることははっきりと分かっています。
このような事件が起こっても”自分の命は自分で守る”と言う理論は簡単には覆りそうにありません。ニューヨークのように都会ばかりでないアメリカ、銃容認派の意見は何か起こった時に警察が家にやってくるまで時間がかかって間に合わない。だから自衛のために銃が必要というのがその理由です。確かに理が通っているように聞こえますが、銃そのものが無くなればそのような心配も減ると思うのですが。
このような理論の後ろ盾に政界で大きな力を持つ全米ライフル協会があります。その協会の本部がニューヨークに一番銃が流れてきているバージニア州にあるのもニューヨークにとっては皮肉なことです。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
安全の先取り 2012 年 4 月 7 日
春らしい暖かい日が続くニューヨークです。ヘルメットをかぶって自転車を楽しむニューヨーカーも増えてきました。ニューヨークの自転車のイメージはスポーツか、デリバリー(配達)。中には通勤に使う人もいますが、日本のママチャリのイメージはありません。スーパーに自転車でお手軽に買い物と言うような使い方は見たことがありません。自転車の前にカゴがついたり、荷台に子供を乗せて走るような風景にはお目にかかれません。
ニューヨークの自転車は完全に自動車扱いで歩道を走ることは許されません。自動車と同じ道を走るか、自転車専用の道路を走らねばなりません。エコムードの高まる中、自転車で通勤する人tも増えてきていて市は自転車専用道路の増設を急いでいます。渋滞のマンハッタンの中で自動車の合間を縫って自転車が走ります。中にはバスにつかまって走る自転車もあってこのような光景を見ているととても自転車など危なくて乗れそうにありません。この自転車、信号無視などをすると自動車と同じく罰金が科せられます。
年間500人の人が自転車との事故によって病院に運ばれ、これは無視することはできません。NYPD(ニューヨーク市警)はこの報告を重く見て、自転車との当たり逃げなどの事故が起きた場合、自動車事故と同様に指名手配で追いかける方針を打ち出しています。安全優先を先取りするこの姿勢、自転車に限ったものではありません。日本も見習うべきではないでしょうか。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
ID 2012 年 4 月 5 日
アメリカの大学入試では希望大学にSAT(Scholastic Assesment Test) か ACT(The American College Testing Program) というテストを受験して報告しなければなりません。大学は願書で提出されるこの共通テストの点数で志望者の学力を検査します。大学進学を希望する高校生にとってはとても重要なテストになるわけです。
SATは年に7回実施され、受験生はその点数を志望大学に報告するわけです。昨年の11月実施のこの重要なSATで集団カンニングが発覚しました。高校のOBなどによる替え玉事件である生徒はこの替え玉受験料として3000㌦(30万円)を支払ったと言います。関係者は50人以上に及ぶと推測され30名が逮捕されました。
アメリカは日本以上に高学歴=よい就職=エリートという意識が強く、受験生も自分の将来をかけて必死に上位大学を目指します。そんな事情の中で発覚したこのカンニング事件。替え玉側はアルバイトの感覚だったようですが、卑怯な方法で合格を勝ち得ようとしたことには変わりありません。
SATの受験会場で本人確認が甘かった為に起こったこの事件。中には女性受験者の替え玉として男性が受験した例もありました。事態を重く見た当局は本人確認のためのIDを発行し、入室と退室ごとにチェックすることにしました。テロ対策としてID(身分証明書)を頻繁に要求するアメリカ。ビルに入室するにもIDが必要でまた、酒を買うにもIDのチェック。日常生活ではうんざりするほど提出が求められるID。今更になって大事なSATの試験会場にもIDを発行するとはなんとも信じられない違和感を覚えてしまいます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
Jwalk ジェイウォーク 2012 年 3 月 30 日
ニューヨークは観光地です。マンハッタンのグッデンハイム美術館が位置する89丁目付近より南がそのニューヨークの観光の中心です。マンハッタン内の南8丁目から北191丁目までは道路が碁盤のように縦横整然としているのでこの区間ならば指定された場所に行くことに迷うことはありません。
南北にAvenue(通り)が走り、東西に8丁目から191丁目までのStreet(ストリート)が走りその碁盤を形成しています。例えばPC TECHは42丁目ストリートとマジソン通りにあります。マジソン通りと42丁目の道が交差する場所にあると言うことで誰でも簡単にその場所が分かります。
南8丁目からもっと南に入るとストリートも入り組み、ストリートも〇〇丁目と数える表記ではなく”トーマスストリート”だとか”キングストリート”といった固有名に代わり、碁盤の目のような分かりやすさがなくなります。この南は果てがバッテリーパークでそこからは自由の女神を見ることができます。
このバッテリーパークと南8丁目の間にウォール街やソーホー、チャイナタウンなどの観光地がパックになっています。碁盤の目地区のセントラルパーク南に新しく通りを作る計画が進んでいます。碁盤の目地区に碁盤の目でなくなる新しい遊歩道が計画されているのです。
北の51丁目と南の57丁目を結ぶ通りを7月までに新たに作ることが決まりました。6番通りと7番通りの真ん中に作られるのでこの通りは7番と6番の中間の通りと言うことで”6と半分通り(Six Avenue and a half)”とあだ名がついています。
碁盤目地区を歩く目安はストリートとストリートの一ブロック間がおおよそ1分。通りと通りが5分くらいです。ニューヨーカーはせっかちが多く、信号を守る人のほうが珍しい気がします。車の合間を縫って信号が赤でも通りやストリートを横断する。このことをどうしてかジェイウォーク(Jwalk)と言います。マンハッタン内はほとんどが一方通行でこのJwalkをやりやすくしています。
今度新しくできる遊歩道、危険なJwalkが少なくなるという意見もありますが交通量の一番多いミッドタウンで歩行者専用の7ブロックにわたる通りは迷惑だとの意見もあります。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
裁判で決着する米国 2012 年 3 月 29 日
前にも話したようにアメリカには日本のような皆保険制度はありません。保険は個人個人が個々の会社と契約を結んで会社が支払うというシステムです。日本のように保健証が無いと言うことです。病気になったらどうするかって?保険会社と保険の契約をしていない人は自分ですべての治療費を支払うことになります。医療費そのものも米国は高く、ちょっとした健診でも400㌦(4万円)ほどは支払わなければなりません。
前に私の部下が盲腸の手術で入院した話をしましたね。あのときの請求額がおよそ3万㌦(300万円)。ものすごい請求額で盲腸の手術でこんなに請求されるとは日本の保険制度から考えればとても信じられません。この部下の場合はAIUと言う保険会社との契約があったので全額、保険会社の支払いで難を避けられました。
でも、一般的にはこの高額な保険の支払いができずにもめているケースが多々あります。定期健診なども保険が使えずに検診料が高い為に、自分からすすんで受けようとする人があまりいません。当然、癌などの早期発見ができず、治療が遅れると言う例が増えます。
このような多くの問題を含んだアメリカの保険制度にオバマ大統領が皆保険制度の導入を試みています。この皆保険に入らない人には罰金を科す、と言うこの制度。日本と同じように進歩するように見えるのですが必要な人だけが保険会社と保険の契約を結ぶと言う現状に慣れたアメリカ人にとっては、強制的に支払わされる保険料は歓迎ではありません。
オバマ大統領に反する共和党もこの制度に反対です。国が保険を強制的に売りつけることは違法としていくつかの州で裁判もありました。この保険論争、今週からいよいよ最高裁での審議に入り、違法であるかどうかの判断がされます。大統領選にも大きく影響するこの裁判の行方が注視されています。
現状の保険会社との契約には大きな欠陥があります。ある一定額になると保険の支払いが無くなるというものです(Life Time Limit)。難病の人など契約金を使い果たしてしまって突然、保険がきかなくなってしまうのです。オバマ大統領はこの保険会社の一方的な規約を皆保険法の中で禁止ししました。この裁判に負ければこの禁止事項も消えます。困っている人のことを考えれば必要な法律のように思えます。個人主義の強いアメリカで人それぞれの思惑をまとめるには裁判所の判断しかないのかと考えてしまいます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長