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ニューヨーク的思考
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2012 年 3 月 5 日

カテゴリー:NYこのごろ

表現の自由

  米国にはキリスト教が経営する学校や病院が多数あります。キリスト教では避妊や妊娠中絶には否定的な教えをします。民主党のオバマ大統領はこのようなキリスト教系列の学校などに避妊に対して保険の補償をしてほしいと声明を出しました。この声明から始まってカトリック教会は宗教への政治の介入だと批判の声を上げ、また共和党はここぞとばかりオバマ大統領の批判に回ります。事態は避妊の保険の必要性を証言した女子大生を批判するラジオ番組へと大きな問題と発展しています。
  この争点はキリスト教の教えではなく女性蔑視の差別をしているかしていないかの点にあります。多くの民族が集まるアメリカ。そしてかってヒラリークリントンが大統領に立候補したように多くの女性が権力者として働くアメリカ。民族や男女、そしてゲイなど性的嗜好に関係する発言はタブーとされています。
  相手を殴る犯罪でもその理由が民族やゲイに由来するものであれば”discrimation(差別)”の犯罪として数倍、罪が重くなります。かって黒人を奴隷として輸入し、何年も間、黒人差別を実行してきたアメリカ。そのような歴史があるからこそこの”差別”の言葉には敏感です。今、ニューヨークのバスケットボールチーム NY Knicksで活躍している台湾出身のJeremy Lin 選手。大変な人気選手ですが、スポーツ専用番組のESPANのWebで Chink in the armour (よろいを着た中国人)と書かれ、大騒ぎになりました。
  Chinkという単語がChineseをもじった中国人への差別用語であったことからです。記者は悪気があったり、差別の気分があったのではなくLin選手を尊敬しているし、親しみをこめて使ったと釈明し、Lin 選手も大きな問題にしたくないとコメントしましたが、この記者は速攻解雇となりました。
  世論も悪気があったわけではなかったが使った言葉は悪いとこの解雇を正しいと評価しています。解雇された本人ですら解雇を判断した自分の会社は正しいと言っています。差別言語に厳しい米国。背景には暗い歴史と個人への強い配慮があるからです。

広域通信高校 一ツ葉高校 校長

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