大都会マンハッタン 2012 年 3 月 27 日
ニューヨーク市はブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、スタテンアイランド島、そしてマンハッタンと4つのブロックから成り立っています。この海に囲まれた4つを総称してニューヨーク市です。観光でよく知られているニューヨークは西89丁目のグッゲンハイム美術館から南になり、マンハッタンに位置します。
観光客が訪れるのはこのマンハッタンの89丁目より南の地が中心で、これより北では観光客はあまり見かけません。もちろん、観光客が訪れるソホーなどダウンタウンの観光地にも多くの市民が生活をしています。マンハッタンの89丁目から南は観光地と生活居住区が混在しています。
このマンハッタンの西側の225丁目で野生のシカが出現し、大騒ぎとなりました。公営住宅に現れた2頭のシカに警察が捕獲作戦を開始、住民はこの珍しい訪問者の写真を撮ろうと大騒ぎです。こんな都会の地にシカが出るなど珍しいことですが、今までにもコヨーテが出没したりなど野生の動物の出没の話題はよくあります。
マンハッタン内にはセントラルパークをはじめ多くの公園があります。公園内でおなじみなのは野生のリス。そして美しい歌を奏でる野鳥です。海に面する公園も多く、カモメやカモなども多くみられます。大都会のイメージのマンハッタンですがそれでも大きな自然を有するアメリカの一部です。摩天楼がそびえたつこの都市も野生の動物たちが生活するエリアと隣り合わせだと考えるとずいぶんとほっとした気持ちになれます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
銃と人種差別 2012 年 3 月 26 日
フロリダで17歳の男の子 Trayvon Martin が射殺されました。このことが全米で大きな問題となっています。この射殺された男の子が武器を持っていない黒人だったからです。この事件はアメリカの根底にあって永遠と続く人種と銃の二つの問題を改めて米国民に問いかけています。
銃による犯罪は珍しくない米国ですが全米中で関心を呼んでいるのは被害者が武器を所持しない黒人の男のであって射殺した白人がその場で逮捕されずに釈放されたからです。フロリダ州は2005年に”Stand Your Ground Law”と言う、自己防衛であれば殺しても構わないという法律が制定されています。この法律は自宅の中でも外でも適応されます。容疑者のGeorge Zimmerman はペルー人の母親を持つ28歳の自警団です。夜中に黒人のこの男の子を見かけた彼は不審に思い、警察に通報。警察がとどまるように言ったにも関わらず男の子を追跡し、射殺してしまいました。
Zimmerman の供述は途中で追跡をやめて自分の車に戻っていたところ、この男の子が戻ってきて乱暴をはたらいたから発砲したとのことです。それならば、まず逮捕すればこのような全米中での大きな問題にまではならなかったはずですが。この Stand Your Ground Law と言うのはその現場で警官がそのケースは自己防衛であったのかどうかを判断できるのです。
このケースの場合、自己防衛と判断され加害者は逮捕されずに帰りました。この判断が人種差別と捉えられ、大きな問題となっています。なぜ、逮捕しなかったのか、白人が加害者で黒人が被害者だったからかと言う世論です。加害者は殴られて身の危険を感じたと言っていますが世間は信用しません。 Black Pnther という黒人の団体がこの加害者に1万㌦の懸賞金をかける始末です。この事件についてオバマ大統領までが被害者のように自分の子供も事件に会うかもしれないと発言して大きな議論を呼んでいます。
米国に住むとこの”差別”は簡単にはなくならないと日常生活で感じることはよくあります。銃もなくなりそうにありません。本当に自由で明るい米国ですがこの根底ある2つの問題はことあるごとに浮上しては人々にこの国の原点を考えさせます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
グラセン 2012 年 3 月 21 日
グランドセントラル駅(Grand Central Terminal)が来年で操業100周年を迎えます。地下道でPC TECHに続くこの駅はマンハッタンを網羅する地下鉄のへそになります。また地下鉄だけでなくコネチカット州まで走る通勤用長距離列車メトロノース(Metro-North)のマンハッタン乗り入れの最終駅となります。通勤時間には多くの乗客が乗降するばかりではなく、その歴史的な景観からニューヨークにおける観光スポットの一つにもなります。
この趣のある駅は世界で6番目に大きな駅でその抱える44のプラットフォームの数(地下鉄は含まずメトロノースだけ)は世界一を誇ります。私たち市民が利用するときはGrand Central Station と呼ぶことが多く、一般的にこの名称でメトロノースの乗り場も地下鉄の乗り場もまとめて表現して使います。ジョントラボルタとデンゼルワシントンのサスペンス映画 Pelham123 の中でも出てきましたが、実はGrand Cenral Terminal と Grand Central Station は正式には全く別物です。
地下鉄の駅とメトロノースの駅はつながっていますが今度100周年を迎えるこの歴史的な建物は長距離通勤用列車メトロノースの駅のことを言うのです。昔はこの駅、Grand Central Station と呼んでいたのですが 1913年の正式オープン以来、正式名をGrand Central Terminal と変更しています。
それではGrand Central Stationとは何か。
実は正式にはTerminalの近くになる郵便局か地下鉄の駅のことを意味するのです。多くの人は地下鉄もメトロノースもひっくるめてGrand Central Station と親しみを込めて呼んでいます。この度、メトロノースの駅の建物が100周年を迎えることで新たに名称の違いに気づく人も多いでしょう。今から来年の2月1日の100周年に向けて1年間を通じての記念行事が予定されています。
この名所グランドセンラルは誰が言い出したか日本人の間では”グラセン”という名前で親しまれています。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
51番目の州 2012 年 3 月 17 日
アメリカ合衆国は50の州で成り立っています。それぞれの州に独立権があり、州ごとに法律が違います。実はアメリカの公用語は英語であると憲法では定められていません。ただフロリダなどいくつかの州では公用語は英語であると定めています。
今年の11月に実施される大統領選で民主党のオバマ大統領の対抗馬として共和党からの候補者選びがデッドヒートしています。Mitty Rommey氏とSantorum氏が有力です。このサントラム氏がプエリトリコで公用語を英語にしなければならないと発言して反感を買いました。
プエリトリコは正式な州ではありません。キューバの北に位置するこの地区はその歴史的背景とアメリカの南米への政策からCommonwealthと言う特別地区として定められています。この島には400万人の住人が住み、米国への税金は免除されながら米国からは福祉を得るという特別な扱いをされています。
ただ、大統領選挙をすることは出来ません。そのかわりに米国国会の下院に1名の議員を送り出すことができます。でもこの議員には採決権はありません。本当に特別な関係の地区です。
住人は米国のパスポートを所持する米国市民です。住民の大半がスペイン語を話します。ここでサントラム氏が州に昇格したければ英語を公用語とするべきだと発言をしたのが問題になったわけです。大統領選挙ができないのでこの自治区で問題があっても大勢に影響はないように思えますが、大統領候補のなるためには共和党の代議員の半数1,144名の支持がいるのです。このプエリトリコにも23名の代議員が居ます。いくら自治区と言っても無視はできない地区です。
51番目の州に昇格するかどうか今年、プエリトリコでは住民投票があります。米国は United States of America, つまり州の集まり。独立した地区の集まりです。ニューヨークにも多くのプエリトリコ人がいますが彼らは米国民としてのプライドを持っています。広い米国だからこその特殊事情です。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
移民のニューヨーク 2012 年 3 月 16 日
いつもの朝の日課ですが、イーストリバー沿いの遊歩道をジョギングした後、新聞を買いにデリーへと向かいます。前にも話しましたがデリーの経営は韓国系、中東系とほとんどが移民の経営です。デリーは日本のコンビニに近い品揃えで新聞や日用雑貨などを狭い店内に並べています。このデリーでは簡単な昼食や朝食が手に入ります。ベーグルやベーコン入りのパンなどが主な品ぞろえで、たいていの場合がデリーから出て食べながら歩くというニューヨークスタイルです。
タクシーの運転手も移民。ここニューヨークは種々雑多な民族の集まりです。ことばも共通語は英語でも韓国語、中国語、ロシア語といろいろな言葉が聞かれます。英語に次いで多いのがスペイン語。ヒスパニックの人口が増えている事情からスペイン語を話し人のほうが増えるかもしれないとまで言われています。TVもスペイン語の放映があります。
これら民族にはそれぞれに大きなコミュニティがあって同じ母国の人が助け合って生活をしています。このように他国からニューヨークに移民し、アメリカ国民となって家族を呼び寄せる。これが一つの流れとなってニューヨークの文化を作っています。このたくさんの移民が暮らすニューヨークですがこのパターンの日本人移民はみかけません。ここで暮らすほとんどの日本人が留学生や大手商社、金融などの駐在員。日本人コミュニティより駐在員コミュニティのほうが目につきます。これも日本が豊かで他の移民のように自分の国を出て米国での生活を目指す必要がないからかもしれません。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
地下鉄 2012 年 3 月 15 日
ニューヨークはしっかり春で暖かい日が続きます。暖冬に終わってそのまま春に突入と言う感じです。週末にかけてサンダーストーム(雷を伴う激しい雨)になるようです。
ニューヨークの雨や雪は半端でなく、雨は一時的に降るものをシャワー shower、激しく降る場合はストーム storm を使用します。 Stormがつく天気の場合は要注意です。へたをするとこの大雨のおかげで地下鉄がストップすることがあります。
ニューヨークの地下鉄には日本のように時刻表がありません。昼間なら何十分も待つことはないのですが休日や夜遅くは本当にいつ来るかわからない状態です。地下鉄の乗り場は急行(Express)と普通(Local)に分かれていて急行を待っていてもなかなか来なくて、普通乗り場へ行って待つこともしばしばあります。分刻みにきちっとくる日本の電車のサービスから考えると信じられないかもしれません。
あるとき、朝の通勤でダウンタウンに向かう時に電車の中でアナウンスが入り、ひと騒ぎありました。みんな普通電車に乗っているのですが車掌が”この電車は今から急行に変わります。51丁目には止まりません”と言い出すのです。びっくりするアナウンスですがどうしようもありません。みんな”Oh my God !”とか”Shit !”とか叫びながら次の駅まで乗っていました。日本では起こらないようなことが平気で起こるニューヨーク。交通の運営もシステムに任せるのではなく個人の判断のほうが強いようです。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
ニューヨークの職種 2012 年 3 月 12 日
前にも話しましたが、マンハッタンの中で自分の車を自分で洗うなど出来ません。日本のように洗車場があって、自分で手洗いするような場所はありません。マンハッタンに住むニューヨーカーは自分の車をCar Washに持って行って洗ってもらいます。
私はマンハッタンの北、イーストハーレム東の109丁目の洗車場に車を持っていきます。ハーレムの始まりの場所でもう少し北に行って140丁目あたりになると白人はほとんど見かけなくなり黒人ばっかりの地域となります。
ハーレムでも東側は特に犯罪も多く危険です。140丁目を境にして街の雰囲気ががらりと変わり、40丁目付近のマンハッタンダウンタウンとは全く違います。まず、背広を着ている人はみかけません。高いビルも姿を消しています。
そんなハーレムのはじまりにある洗車場に車を運ぶとたくさんの従業員がベルトコンベア式に車を洗ってくれます。最後には7人で1台の車をふきあげます。この従業員たちはラテン系の人ばかりです。
このCar Wash、労働条件が問題となっています。科学洗剤による健康阻害、それに対する会社からの保険の保証がないとかチップを会社がとる、賃金が低すぎるなど。Car Wash New York と言う団体がこの不満を代弁し、組合に発展する模様です。ニューヨークの職種は人種で決まっている節があり、デリーは中東系か韓国系。新聞スタンドはインド系、タクシーの運転手はさまざまな国の移民。統一していえるのがこのような職に白人がいないこと。ニューヨークではこのような移民系の職の発言権が低いのもうなづけます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
校長の解雇 2012 年 3 月 10 日
ブロンクスの高校の校長がクビになりました。生徒の出席をごまかしていたのが原因です。出席していない生徒を出席していると報告していることが分かって解雇されました。この女性校長は年間145,000㌦(1450万円)の高収入を得ていました。それにプラス25,000㌦(250万円)のボーナス。こんな好条件のしっかりした校長が生徒の出席をごまかしたくらいで解雇になるとは厳しすぎると思いませんか? それがここニューヨークでは生徒の出欠、態度、成績の教育庁へのうその報告は重大な犯罪となってしまいます。それは先に再三、ご紹介しているようにニューヨークの学校は出欠や成績、治安などでランクがつけられ、基準以下の学校には期限指定の改善命令が出ます。期限以内に改善の成果がないと廃坑処分となります。それと連動してその学校の校長をはじめ教師はその責任をとって解雇となります。
反対にランクが良い学校にはボーナスも出て、その給与もそのランクに準じることになります。今回、解雇された校長はトップランクを維持していた学校の校長で欠席した生徒のおかげでそのランクとボーナスを失いたくなかったのでしょう。
この手の報告のごまかしはブルンバーグ市長の作ったニューヨークの新教育システムの大きな落とし穴となっています。成績のごまかしは後を絶たず、教職員同士の評価のかばい合いも見受けられます。どんなシステムを作っても使う人間がルールを守らねば何にもなりません。どこの国でもこのことは同じですが、新しくできてまだ年数が浅いこのシステム、いまから運用のノウハウをもっとみがく必要があります。が、米国の教育のこのシステムは日本よりははるかに進んでいると思います。
広域通信高校 一ツ葉高校校長
33校が閉鎖 2012 年 3 月 7 日
自宅の近くに学校があります。街のど真ん中でビルに一角にあります。2年位前から子供の数が増えたなあと思うと近くに学校が4つくらいできています。お昼は生徒たちが食事を買い求めて近くのデリにあふれています。以前はなかったのにここ数年で自宅付近にバタバタと新しい小中学校が出来ました。3時くらいになると通りは迎えに来たスクールバスでごった返しになり、車も渋滞します。
さて、このようにどんどんと新しい学校ができる一方で閉鎖される学校も少なくありません。生徒の数が少なくなり閉鎖されるわけではありません。学校の業績(performance)がわるいと勧告を受け、指定された期間内に改善が認められなければ閉鎖となります。ブルンバーグが市長となってから学校改革を全面に掲げ、学校行政の全権限を市長のものとしました。すなわち、学校は市長の命に従うという大胆な構図です。これに基づき、先生の査定制度や貧困層への学費補助など様々な改革を進め、市長は成果が上がったと自負しています。
この政策に真っ向から反対しているのがニューヨーク教職員組合(NY Teachers Union)です。組合長の Mulgrewは教育長のWalcottとの対話に応じようとせず、このままでは連邦政府からの予算がニューヨークに来なくなります。前回に公表された教師の評価一覧に猛烈に反対したこの組合長、市と州が提示している教師の評価制度の話し合いに全く応じようとしません。
官僚的トップダウンが当たり前なこの米国。一方で教育だけは特別に教師平等を唱えるUnion。全くいびつに映ります。生徒の親たちはよりよい教師を求め、教師評価制には大きな反対はありません。子供を相手にする仕事だからでしょうか。大人を相手にする仕事なら不満があればそのお客の大人が直接不満をいいますが、子供はできない。それにあぐらをかいている実態は日本と変わらないと感じます。
広域通信制高校 一ツ葉高校 校長
表現の自由 2012 年 3 月 5 日
米国にはキリスト教が経営する学校や病院が多数あります。キリスト教では避妊や妊娠中絶には否定的な教えをします。民主党のオバマ大統領はこのようなキリスト教系列の学校などに避妊に対して保険の補償をしてほしいと声明を出しました。この声明から始まってカトリック教会は宗教への政治の介入だと批判の声を上げ、また共和党はここぞとばかりオバマ大統領の批判に回ります。事態は避妊の保険の必要性を証言した女子大生を批判するラジオ番組へと大きな問題と発展しています。
この争点はキリスト教の教えではなく女性蔑視の差別をしているかしていないかの点にあります。多くの民族が集まるアメリカ。そしてかってヒラリークリントンが大統領に立候補したように多くの女性が権力者として働くアメリカ。民族や男女、そしてゲイなど性的嗜好に関係する発言はタブーとされています。
相手を殴る犯罪でもその理由が民族やゲイに由来するものであれば”discrimation(差別)”の犯罪として数倍、罪が重くなります。かって黒人を奴隷として輸入し、何年も間、黒人差別を実行してきたアメリカ。そのような歴史があるからこそこの”差別”の言葉には敏感です。今、ニューヨークのバスケットボールチーム NY Knicksで活躍している台湾出身のJeremy Lin 選手。大変な人気選手ですが、スポーツ専用番組のESPANのWebで Chink in the armour (よろいを着た中国人)と書かれ、大騒ぎになりました。
Chinkという単語がChineseをもじった中国人への差別用語であったことからです。記者は悪気があったり、差別の気分があったのではなくLin選手を尊敬しているし、親しみをこめて使ったと釈明し、Lin 選手も大きな問題にしたくないとコメントしましたが、この記者は速攻解雇となりました。
世論も悪気があったわけではなかったが使った言葉は悪いとこの解雇を正しいと評価しています。解雇された本人ですら解雇を判断した自分の会社は正しいと言っています。差別言語に厳しい米国。背景には暗い歴史と個人への強い配慮があるからです。
広域通信高校 一ツ葉高校 校長